奥歯が欠けてしまい、数日間あるいは1週間程度歯医者に行けないという空白期間、ついやってしまいがちな行動が症状を劇的に悪化させることがあります。これらを避けることは、受診までの最も重要なミッションです。まず、最大のNG行動は「欠けた部分を使って食事をする」ことです。これは建物で言えば、柱が1本折れた状態でさらに重い荷物を載せるような行為です。欠けた奥歯は垂直方向の力に対して極端に弱くなっており、少しの衝撃で根元まで割れてしまう「歯根破折」を招く危険があります。歯根破折が起きると、現代の医療でも多くの場合で抜歯以外の選択肢がなくなります。たった一口の油断が、一生の歯を失う代償になることを肝に銘じ、必ず反対側で噛むように徹底してください。次に「自分で破片を接着する」という行為も絶対に避けてください。市販の接着剤には生体に有害な成分が含まれており、歯の内部にある細胞を壊死させてしまう恐れがあります。また、接着剤が断面を覆ってしまうと、歯科医院で本来行われるべき精密な洗浄や殺菌ができなくなり、詰め物が適合しなくなる原因にもなります。さらに「痛みが引いたからと受診をキャンセルする」のも極めて危険なNG行動です。歯の神経が一度死んでしまうと、一時的に痛みを感じなくなる期間がありますが、これは治ったわけではなく、むしろ腐敗した組織が骨の中に膿を溜め始めているサインです。このタイミングで放置を続けると、次に痛みが再燃した時には顎の骨まで炎症が広がり、顔が大きく腫れ上がる重篤な事態を招きます。また「刺激の強いものを摂取する」ことも控えましょう。非常に辛いもの、非常に酸っぱいもの、炭酸飲料などは、露出した象牙質を化学的に攻撃し、激しい知覚過敏を誘発します。お酒も血圧を上げて患部の拍動痛を強めるため、痛みが引くまでは我慢すべきです。さらに「爪や不潔な指で欠けた部分をいじる」のもやめてください。指先には無数の雑菌がついており、それを直接患部に擦り付けるのは感染を自分から招いているようなものです。お口の違和感は気になるものですが、触っても解決することはありません。最後に、自分を過信して「ネットの情報だけで処置を済ませる」のも控えましょう。奥歯の状態は一人ひとり異なり、レントゲンを撮らなければ内部のダメージは誰にも分かりません。これらのNG行動を意識的に排除することで、欠けた奥歯の余命を最大限に延ばし、医師による救済の可能性を高く保つことができるのです。