ある日ふと鏡を見ると、歯茎にぷくっとしたできものが。痛みはないけれど、舌で触ると気になる。そんな経験をした時、多くの人は「しばらく様子を見よう」と考えてしまうかもしれません。しかし、歯茎に現れるできものは、決して軽視してはいけない体からの重要な危険信号である可能性が高いのです。歯茎のできものには様々な種類があり、その原因も多岐にわたります。最も一般的なものの一つが「フィステル」と呼ばれるものです。これは歯の根の先に膿が溜まり、その膿を排出するために歯茎に作られたトンネルの出口です。見た目は白っぽいニキビのようで、押すと膿が出てくることもあります。フィステルの根本的な原因は、歯の神経が死んでしまった重度の虫歯や、過去に治療した歯の根の再感染です。これを放置すれば、膿の袋はどんどん大きくなり、顎の骨を溶かしてしまう深刻な事態につながります。また、口内炎が歯茎にできることもあります。白く円形で、触れると強い痛みを伴うのが特徴です。通常は1週間から2週間で自然に治りますが、頻繁に繰り返す場合や、大きさが変わらない場合は注意が必要です。その他にも、歯周病が進行して歯周ポケットに膿が溜まる「歯周膿瘍」や、良性の腫瘍である「エプーリス」、さらには極めて稀ですが「口腔がん」の初期症状としてできものが現れることもあります。このように、一口に「できもの」と言っても、その背景には様々な病気が隠れています。痛みがないからといって自己判断で放置するのは非常に危険です。歯茎のできものに気づいたら、それはあなたの口の中、あるいは体全体で何らかの異常が起きているサインだと受け止め、できるだけ早く歯科医院を受診し、専門家による正確な診断を受けることが何よりも重要です。