歯周病でもないし、歯磨きも優しくしているつもりなのに、なぜか特定の歯の歯茎だけが下がってくる。そんな場合は、無意識のうちに行っている「歯ぎしり」や「食いしばり」(ブラキシズム)が原因かもしれません。歯ぎしりや食いしばりは、睡眠中や日中の集中している時などに、上下の歯を強くこすり合わせたり、噛み締めたりする癖のことです。この時に歯や顎にかかる力は、食事の時の何倍にもなると言われており、この過剰な力が歯茎に深刻なダメージを与えることがあるのです。過剰な噛み合わせの力は、歯を支えている周囲の組織、すなわち歯根膜や歯槽骨に、まるで地震のように絶え間ない揺さぶりをかけ続けます。この強い圧力によって、歯槽骨に微小な破壊が起こり、骨が吸収されてしまうことがあります。特に、もともと歯を支える骨が薄い部分では、この影響を受けやすく、骨が痩せてしまうことで、その上にある歯茎も一緒に下がってしまうのです。このような力によって引き起こされる歯茎の下がりは「咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)」の一症状と考えられます。また、歯ぎしりによって歯が横に揺さぶられる力は、歯と歯茎の間にくさびを打ち込むような作用をし、付着を剥がして歯肉退縮を助長することもあります。朝起きた時に顎が疲れている、家族から歯ぎしりを指摘されたことがある、歯の先端がすり減っている、頬の内側に白い線があるといったサインがあれば、ブラキシズムの可能性が高いでしょう。この場合、いくら歯磨きを頑張っても、歯茎が下がる根本原因を取り除くことはできません。対策としては、歯科医院で自分専用の「ナイトガード(マウスピース)」を作製してもらうのが一般的です。夜間にこれを装着することで、歯や顎にかかる力を分散・緩和させ、歯茎へのダメージを防ぐことができます。思い当たる節がある方は、一度歯科医師に相談してみることをお勧めします。