健康な歯茎は、引き締まったピンク色をしており、歯にぴったりと密着しています。しかし、ある日鏡を見て、自分の歯茎が赤っぽく腫れあがり、指で押すとぶよぶよとした感触があることに気づいたら、それは決して見過ごしてはならない危険なサインです。歯茎のぶよぶよは、多くの場合、歯周病が進行していることを示しています。歯周病は、歯と歯茎の間に蓄積した歯垢(プラーク)に含まれる細菌が原因で引き起こされる炎症性の疾患です。初期段階の歯肉炎では、歯茎が少し赤くなったり、歯磨きの時に出血したりする程度ですが、この状態を放置すると炎症は歯茎の内部へと広がっていきます。細菌が出す毒素によって歯茎の組織が破壊され、コラーゲン線維が失われると、歯茎はその弾力性を失い、ぶよぶよとした締まりのない状態になってしまうのです。このぶよぶよした歯茎は、単に見た目が悪いだけではありません。これは、歯と歯茎の間に「歯周ポケット」と呼ばれる深い溝が形成されている証拠です。このポケットは細菌の温床となり、歯周病をさらに悪化させる悪循環を生み出します。そして、この状態が続くと、炎症は歯を支える顎の骨(歯槽骨)にまで及び、骨を溶かし始めます。骨という土台を失った歯は、やがてぐらつき始め、最終的には抜け落ちてしまうのです。歯茎のぶよぶよは、いわば「あなたの歯の土台が崩れ始めていますよ」という体からの警告です。この段階であれば、まだ適切な治療によって健康な状態を取り戻すことが可能です。このサインに気づいたら、「いつか治るだろう」と楽観視せず、一刻も早く歯科医院を受診し、専門家による診断と治療を受けることが、あなたの歯を守るための最善の策となります。