西洋医学では、口内炎と、それに伴うリンパの痛みは、「炎症」と、それに対する「免疫反応」として、捉えられます。しかし、東洋医学の世界では、この症状を、また、少し違った視点から、見つめます。それは、体の内部の「バランスの乱れ」が、表面に現れたもの、という考え方です。この視点を知ることは、西洋医学的な治療に加えて、体質そのものを改善するための、新しいヒントを与えてくれるかもしれません。東洋医学において、口内炎は、体の中に、過剰な「熱(ねつ)」が、こもっている状態(熱証)の、代表的なサインと考えられます。この「熱」は、暴飲暴食や、精神的なストレス、過労などによって、体内のエネルギーである「気・血・水(き・けつ・すい)」のバランスが崩れることで、発生します。そして、この、行き場を失った熱が、経絡(エネルギーの通り道)を通じて、上昇し、体の「出口」である、口の中に、炎症、つまり、口内炎として、噴き出してくるのです。一方、リンパ節の腫れや痛みは、「邪気(じゃき)」、つまり、外部から侵入してきた、病気の原因となるものと、体を守る「正気(せいき)」が、激しく戦っている状態と、捉えられます。また、ストレスなどによって、気の流れが滞る「気滞(きたい)」や、血の流れが滞る「瘀血(おけつ)」が、首の周りで起こり、しこりや痛みとして、現れることもあります。東洋医学の面白いところは、口内炎が「できる場所」によって、どの臓腑(ぞうふ)に、熱がこもっているかを、推測する点です。例えば、舌の先にできる口内炎は、精神活動を司る「心(しん)」の熱。頬の内側や、唇にできる口内炎は、消化器系である「脾胃(ひい)」の熱。舌の脇にできる場合は、感情のコントロールに関わる「肝(かん)」の熱、といった具合です。では、どうすれば、この熱を冷まし、バランスを取り戻せるのでしょうか。漢方薬による、専門的な治療もありますが、日々の食生活(食養生)でも、工夫ができます。体の中に熱がこもっている時は、体の熱を冷ます「涼性」や「寒性」の食材、例えば、きゅうりや、トマト、なすといった夏野菜や、豆腐、緑茶などを、摂るのが良いとされています。逆に、唐辛子などの香辛料や、アルコール、揚げ物といった、体に熱を加える食べ物は、控えるべきです。