歯茎にできたニキビのようなできもの(フィステルなど)を見つけると、気になって指や爪で潰してしまいたくなる衝動に駆られるかもしれません。しかし、その行為は絶対にやめてください。歯茎のできものを自分で潰すことは、百害あって一利なし。かえって症状を悪化させ、深刻な事態を招きかねない非常に危険な行為なのです。なぜ潰してはいけないのでしょうか。第一に、感染を拡大させるリスクがあるからです。できものの中には、大量の細菌を含んだ膿が詰まっています。これを潰すと、膿が口の中に広がり、周囲の健康な歯茎や組織に細菌をまき散らしてしまうことになります。また、私たちの指先には無数の雑菌が付着しており、潰した傷口から新たな細菌が侵入し、二次感染を引き起こす可能性も高まります。炎症がさらにひどくなり、より強い痛みや腫れにつながる恐れがあるのです。第二に、根本的な解決には全くならないからです。歯茎のできもの、特にフィステルは、歯の根の奥深くにある感染が原因です。たとえ一時的に膿を排出してできものが小さくなったとしても、大元にある膿の生産工場が稼働している限り、またすぐに膿は溜まり、できものは再発します。出口を塞いでも、蛇口を閉めなければ水が止まらないのと同じです。むしろ、中途半端に潰すことで、膿の正常な排出口を塞いでしまい、内圧が高まって顎の骨の中で膿の袋がさらに大きくなってしまう危険性すらあります。歯茎のできものは、体の内部で起きている問題のサインです。そのサインを無理やり消し去ろうとするのではなく、なぜそのサインが出ているのか、根本原因を探り、治療することが重要です。気になる気持ちは分かりますが、決して自分で触らず、速やかに歯科医師に相談し、適切な処置を受けるようにしてください。