歯茎にできた、赤みがかかったカリフラワー状のできもの。痛みはあまりないけれど、徐々に大きくなっている気がする。そんな場合、「エプーリス」という良性の腫瘍の可能性があります。エプーリスは、歯茎(歯肉)に発生する腫瘤(しゅりゅう)の総称で、その多くは良性です。見た目は様々で、滑らかな球状のものから、ゴツゴツとした不整形なものまであります。色は健康な歯茎に近いピンク色のこともあれば、炎症を伴って真っ赤になることもあります。原因は完全には解明されていませんが、合わない詰め物や被せ物、入れ歯の不適合、あるいは歯石などによる慢性的な機械的刺激が、歯茎の組織の過剰な増殖を引き起こすと考えられています。つまり、常に何かが歯茎に当たり続けている状態が、できものを作る引き金になるのです。エプーリスは、その組織の成り立ちによっていくつかの種類に分類されますが、特に女性に見られる特徴的なタイプがあります。それは「妊娠性エプーリス」と呼ばれるもので、妊娠中の女性ホルモンのバランスの変化が影響して発生します。妊娠中はホルモンの影響で歯茎が炎症を起こしやすく、わずかな刺激にも過敏に反応するため、エプーリスができやすい状態になるのです。妊娠性エプーリスは、出産後にホルモンバランスが元に戻ると、自然に小さくなったり消えたりすることも多いため、妊娠中は経過観察となることが一般的です。エプーリスは良性腫瘍なので、それ自体が命に関わることはありません。しかし、徐々に大きくなって食事や会話の邪魔になったり、歯磨きがしにくくなって衛生状態が悪化したりすることがあります。治療は、局所麻酔下での外科的な切除が基本となります。気になるできものを見つけたら、自己判断せずに歯科医院を受診し、それが何であるかを正確に診断してもらうことが大切です。