「歯茎が少しぶよぶよしているだけ。痛みもないし、まだ大丈夫だろう」。そんな風に軽く考えて、症状を放置してしまうと、その先には想像以上に恐ろしい未来が待っているかもしれません。歯茎のぶよぶよは、歯周病が静かに、しかし着実に進行している証拠であり、それを無視することは、自ら歯を失う道を選んでいるのと同じことなのです。ぶよぶよした状態が続くということは、歯茎の内部で炎症が慢性化し、歯を支える重要な組織が破壊され続けていることを意味します。歯周病菌は、歯周ポケットの奥深くで増殖を続け、歯を土台である顎の骨(歯槽骨)に固定している歯根膜を破壊し、さらには歯槽骨そのものを溶かしていきます。骨が溶けてしまうと、もはや歯は安定して立つことができません。最初は食べ物を噛んだ時に少し違和感を覚える程度かもしれませんが、やがて歯は明らかにぐらつき始めます。そして、ある日突然、硬いものを噛んだ拍子に歯が折れたり、あるいは何のきっかけもなくポロリと抜け落ちてしまったりするのです。虫歯でもない、健康に見える歯を失う衝撃は計り知れません。そして、一本の歯を失うと、その影響は口全体に及びます。噛み合わせのバランスが崩れ、残った歯に過剰な負担がかかるようになり、ドミノ倒しのように次々と歯を失っていくリスクが高まります。また、歯周病の問題は口の中だけにとどまりません。近年の研究では、歯周病菌が歯茎の血管から体内に侵入し、全身を巡ることで、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎など、命に関わる様々な全身疾患のリスクを高めることが明らかになっています。歯茎のぶよぶよを放置することは、歯を失うだけでなく、あなたの全身の健康をも脅かす行為なのです。その小さなサインを見逃さず、早期に対処することが、明るい未来を守るために何よりも重要です。