優れた歯医者は真似る、偉大な歯医者は盗む

口内炎と、それに伴うリンパの痛み。そのほとんどは、良性の炎症や、感染症が原因であり、適切な治療で、数週間以内に改善します。しかし、ごく稀にですが、これらの症状の背景に、「口腔がん」という、最も警戒すべき病気が隠れていることがあります。過度に心配する必要はありませんが、万が一の可能性を見逃さないために、その危険なサインについて、正しい知識を持っておくことは、非常に重要です。口腔がん（特に、舌がんや歯肉がん）の初期症状は、一般的な口内炎と、非常によく似ていることがあります。しかし、その性質には、いくつかの決定的な違いがあります。まず、最も重要な違いが、「治癒しない」ということです。通常の口内炎は、1〜2週間で、自然に治癒に向かいますが、がんは、自然に治ることはなく、むしろ、時間が経つにつれて、徐々に大きくなっていきます。「2週間以上治らない口内炎」は、がんを疑う、最初の、そして、最も重要なサインです。次に、「痛み」です。口内炎は、初期から強い痛みを伴いますが、初期のがんは、意外にも、「痛みがほとんどない」ことが多いのです。この「痛くない」という特徴が、発見を遅らせる、大きな原因となります。そして、がんが進行してくると、口の中の病変から、がん細胞が、リンパ液の流れに乗って、近くのリンパ節へと、たどり着きます。これが、「リンパ節転移」です。転移したリンパ節では、がん細胞が増殖を始め、リンパ節が、大きく腫れ上がります。がんによるリンパ節の腫れには、特徴があります。通常の炎症性の腫れが、比較的柔らかく、押すと痛みがあるのに対し、がんの転移による腫れは、「硬く」、ゴムのような弾力があり、押しても「痛みがない」ことが多いのです。また、周りの組織と癒着して、指で動かそうとしても、動かない、という特徴もあります。まとめると、がんを疑うべき、危険なサインは、①2週間以上治らない、②硬いしこりを伴う、③初期には痛みがない、④転移したリンパ節は、硬く、痛みがなく、動かない、という点です。もし、あなたの口内炎とリンパの腫れが、これらの特徴に、少しでも当てはまるように感じたら、絶対に放置せず、速やかに、「口腔外科」を標榜する、専門の医療機関を、受診してください。早期発見であれば、口腔がんは、決して怖い病気ではないのです。